はじめに

少子高齢化、低成長の日本社会、大多数の消費者が、本当に必要でそれでも自分の好みに合った商品サービスでしかも品質が良くて納得できる価格のものしか求めない時代になっています。
こうした厳しい時代に、仕事に自信を持って取り組み、組織の一員として力を発揮するためには、仕事の基本をしっかりと自覚しておかなければなりません。
仕事の心構えとしては、顧客意識、品質意識、納期意識、時間意識、目標意識、協調意識、改善意識、コスト意識の8つを挙げることができます。

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仕事の基本となる8つの意識

顧客意識(すべての基本は「お客様第一」)

仕事をするにあたってもっとも大切なのは、まず何よりも「お客様のことを考える」という姿勢です。

製品を作る、商品を売る、サービスを提供する、こうした活動は、すべて買う側、受ける側のお客様あってのことです。
お客様がほしくない商品は売れず、お客様が満足できないサービスは求められません。こう考えれば、会社や商店の活動にとって、お客様第一という気式がもっとも重要だということがわかります。

お客様に常に満足していただける商品やサービスを提供するためには、次のような姿勢や行動が大切となります。

1.お客様のニーズを把握する
2.お客様の役に立つ商品やサービスを提供する
3.お客様に満足していただくために、仕事のやり方を見直す
4.ライバルや社外の動きをつかむ
5.すべての部門で顧客意識をもつ

品質意識(要求される条件を満たし、それ以上を求める)

お客様を満足させる第一の条件は、お客様の求めたものが食品であれば味が、道具や機械であれば機能や使い心地などが、お客様の期待どおりのものであることです。
お客様の望むとおりの商品やサービスを提供することが必要です。
しかし、お客様の期待を満たしさえすればよいというわけではありません。
お客様は、すでに一定の評価の基準をもって商品やサービスを望むわけですから、本当は期待以上の商品やサービスであってはじめてお客様の満足感につながるのです。

仕事の内容やひとにたいしても、同じことです。
状況に応じて「求められている以上に成果をあげる」ことがひつようであり、これができてはじめてよい品質をていきょうしたということができます。
仕事には必ず要求されている条件があります。
「自分の仕事に要求されている条件は何か」ということをよく理解し、それを確実に満たし、さらにそれ以上のものを求めていくことが望まれるのです。

納期意識(納期を守ることが信頼に)

会社同士、商店同士の競争が厳しい現代では、製品やサービスの充実はあたりまえのことであり、そのぶん、できるだけ素早くお客様に対応することが重要になってきます。
これは、外部のお客様や得意先に対してはもちろんですが、社内の仕事相手に対しても同様です。
仕事にはすべて予定というものがあります。自分の仕事が遅れれば、仕事の相手にも影響を与えるのです。
どんなに重要な仕事でも、約束の期日までに完成しなければ価値はないも同然です。
また、期日を守る、つまり“納期を守る”といっても、期日ぎりぎりで間に合わせるのでは、受け取った人が検討や修正を行う余裕もなくなり、その人の仕事の品質を低下させるもとになります。
会社全体から見て、仕事の品質を低下させないためには、余裕時間を見込んだ仕事の進め方が大切になります。

1.どんな仕事でも必ず納期・期限を確認する
2.納期から逆算してスケジュールを立てる
3.毎日、仕事の優先順位を確認する
4.前もってできることは後回しにせず、すぐにやっておく
5.日常業務の予定は、その日に必ず終わらせ、翌日に回さない

時間意識(スピーディな仕事と時間の節約が大事)

仕事は迅速に手際よく進めることが大切です。
また、1日のスケジュールでは、重要な仕事にできるだけ多くの時間を割り当て、意味のないことは削って、時間を有効に使うという意識が大切です。

さらに、時間の使い方そのものを点検し、価値を生まない無駄な時間がないかを考えてみる必要になります。
それには、身の回りをいつも整理・整頓し、あわてて物を探すことのないようにする、待ち時間はできるだけ減らしてその時間を他の仕事に回す、仕事を正確に行いミスを減らす、仕事中のおしゃべりは慎むなど、無駄を減らし、時間を節約する意識を持つことが大切です。

以下は、的確な時間管理のポイントです。

1.あらかじめ仕事には期限を設定し、必ず守るように努力する
2.仕事の手順・段取りを決め、いつまでに、または、どのくらいの時間をかけて行うべきかの計画を立てる
3.自分に関係する仕事を行っている人の状況に気を配る
4.緊急事態のときには、通常の手続きやルールを省略して、事後報告するなど、柔軟に取り組む
5.自分ひとりの手に負えない仕事を、いつまでも抱え込まない

目標意識(ゴールを設定して仕事に取り組む)

仕事は目標を立てることから始まります。
仕事とは、なにを、いつまでに、どう実現するかという、具体的な目標に向かって進めるものだからです。
組織全体にも、一人ひとりの個人にも、目標は必要です。
全員が1つの方向をめざせる明確な目標があってはじめて、その目標に向けてそれぞれのメンバーが何をしたらよいかという一人ひとりの目標が立てられるのです。

目標を持つことが大切だという意味は、いろいろあげられます。
まず、目標があれば、「今、自分は何をするべきか」が明確になります。
また、仕事が終わった時には、達成度が具体的にわかります。
もし、目標が達成できなかった時でも、次に何をどれだけやればよいかを知ることができます。

本当に責任ある仕事のやり方は、まず「これだけやる」と仕事の目標を設定し、それに向かって努力し、その目標に到達することです。
また、もしも目標に到達できなかった時には、方法を改善して、次の機会には目標を達成するよう努力します。

1.仕事にとりかかる前に、目標を決めて達成する方法を考える習慣をつける
2.達成基準をできるだけ具体的な数値で示し、客観的に測定できるものする
3.お互いの目標を知らせあうことで、皆が成果を競い合う
4.期限が長期にわたる場合には、中間目標を設定する

協調意識(協力すれば力は倍化する)

大きな会社にあっても個人の商店であっても、仕事は一人ではできません。
だれもが組織の一員として何らかの役割を分担し、協力して一つの大きな仕事を仕上げるのです。
自分の仕事の結果は、一つの大きな成果に結びついているのだということを常に理解し、まわりの人と協調しながら毎日の仕事に取り組むことが大切です。

ここでいう協調意識で注意しておく必要があるのは、ただ「和気あいあいとして楽しい」ということではないことです。
職場の協調意識とは、仕事のうえで一つの目的を実現するために「全員の力を合わせる」ためのものだということを忘れてはなりません。
自分の間違いを指摘されたら素直に認め、仲間のやり方に悪いところがあれば率直に指摘する、こうした雰囲気づくりが、組織としての力(相乗効果)を引き出すのです。

1.全体の目標をよく理解する
2.自分の役割を自覚し、分担している仕事を確実に行う
3.全体の目標を常に考え、周囲の人には積極的に協力する
4.よく発言し、他人のいうことには傾聴する
5.報告を欠かさず、必要な連絡や相談は忘れずに行う

改善意識(仕事のムダ・ムラ・ムリを取り除く)

自分の仕事のやり方を客観的にみるというのは、意外に難しいものです。
ひとつのやり方が身に付くと、自分にとってその方法が最良のもののように思え、仕事の条件や環境が変わってそのままのやり方ではムダやムリがでてくるようになっても、その方法を見直してみようという気持ちが起きにくくなるのです。

仕事の条件や環境が変われば、それに応じて仕事のやり方も変える必要があります。
仕事には、永遠にこれでよいというやり方は存在しません。
新しい方法を常に工夫して、ムダ・ムラ・ムリを取り除こうとする姿勢が大切です。
この意識を改善意識といいます。

改善意識

この改善意識のもとになるのが、問題意識です。問題意識とは、今の状態をただ当たり前のこととして受け止めるのではなく、これはこのままでよいのか
ここはこうしたほうが良いのではないかなど、常に新鮮な目で物を見ようとする意識です。

コスト意識(最小のコストで最大の成果を狙う)

いくら多くの売上があっても、それを上回る費用がかかったのでは何の意味もありません。
ヒトを雇えば人件費、設備を使えば設備費、原料を買うには仕入費と、すべてに費用がかかります。
こうしたものは、すべて必要な経費であると同時に、利益を圧迫するコストにもなります。
したがって、企業間の競争は、売り上げの競争であるとともに、どれだけ低くコストをおさえるかの競争であるともいえるのです。

今の企業は、きびしい経営環境の中で、ヒトにかかるコストをおさえようとします。
これを一人ひとりの立場に立って考えれば、自分の時間を適切に管理して、ムダを省き、仕事の密度を高めることに努める必要がある、ということになります。

<仕事の進め方におけるムダの排除>

1.仕事の目的をつかむ
2.自分の役割(なにを、どこまでやるか)を明確に理解する
3.仕事の手順・計画を立てる
4.仕事を完成させるための方法を習得しておく
5.仕事の遂行が困難なときは、指示や協力を求める

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お客様第一の意識を持つ

仕事はひとつ

これまで、仕事の基本となる8つの意識を説明してきましたが、もう一度、大切なことを確認しましょう。
8つの意識とはいっても、仕事自体は1つです。

たとえば、品質さえよければすむという仕事、納期だけ守ればよいという仕事はありません。
8つの意識とは、1つの仕事をいろいろな角度から見たときの要求条件、それぞれの見方にすぎません。
同じ1つの仕事の中に、すべての条件が求められているのです。

8つの意識は並立しにくい

安い、うまい、早い―この3つを同時に達成するのは容易ではありません。
つまり、多くの場合、8つの意識を同時に、どれも完全に満足されることは難しいのです。
極端に言えば、一方を満たせばもう一方が不足、ということすらあります。

その分、その仕事の内容を熟知し、そのとき要求される条件を正確につかんで、どの条件(意識)をもっと優先すべきか判断し、仕事の進め方を決めることが大切です。

原点は、お客様(顧客主義)

もう一度、最初に戻りましょう。
これら8つの意識のうちで、つねに最優先すべきものが1つだけあります。
それが、顧客主義です。
品質、納期、目標などは、お客様を満足させるための指標です。
協調、コスト、改善、時間などは、その指標に近づくために守るべき意識です。

会社も商店も、お客様に満足していただくためにはどうすればよいかを軸にして、毎日活動しているのです。
「仕事の基本はお客様意識である」、このことをもう一度しっかりと確認してください。

*自分の仕事を点検する*

仕事をできるだけ効率よく、また、品質的にも高く仕上げるためには、次のような観点から点検していくこと大切です。

正しく 転記間違い、操作ミス、計算違い、手配もれ、事実誤認を防ぐ
早く 準備をする、停滞をなくす、前もってできることを実施しておく、スケジュールを立てる、優先順位をつける、手に負えない仕事を抱え込まない、身辺を整理・整頓しておく
安く 紙を大切にする、電話は要領よくかける、買いすぎや持ちすぎをしない、作りすぎない、まとめて処理する、むやみに外注しない
楽に マニュアルや手引きを作成する、作業手順を簡略にする、道具を有効利用する、帳票類・文書類のパターン化、数字のグラフ化・チャート化を行う
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